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連載コラム

連載 自転車徒然草

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第16回「和紙とうだつの町を自転車散歩」

気候もおだやかな春、自転車を走らせるのに心地よい季節がやってきた。冬の間、寒くてご無沙汰していた自転車に改めて乗り出した人も、この春から自転車ライフをデビューした人も、春の爽やかな風を切って、軽快なスピードで自転車を走らせてみよう。きっと自転車だからこそ見えてくる風景があるはずだ。ゆっくりと流れる景色は、クルマでは気づかなかった出会いや発見も届けてくれる。さあ、素敵なシャッターチャンスを求めて、カメラを片手にサイクリングに出かけるとしようか。


ぎっくり腰で、サイクリングの予定変更

春本番、お花見を兼ねてサイクリングもいいなかと思い、cyclejamの特集記事(ちょっと気になるサイクリング協会/2011年3月1日更新)で紹介されていた愛知県サイクリング協会が企画したサイクリングツアー、探訪あいち2011「淡墨桜(うすずみざくら)鑑賞ツアー」に参加することにした。
淡墨桜というのは、岐阜県岐阜市の北西部に位置する本巣市(旧・根尾村)にある樹齢1500年以上のエドヒガンザクラの古木で、国の天然記念物にも指定されている桜だ。蕾の時は薄いピンク、開花すると白色、散り際には淡い墨色になるという。幹から分かれた枝は東西26.9m、南北20.2mにもなる。まだ写真やテレビの映像でしか見たことがない淡墨桜を、ぜひ一度この目で見てみたいと思っていた。
今回「淡墨桜鑑賞ツアー」がおこなわれるのは4月10日(日)。僕が住む名古屋では桜もそろそろ散り始める頃だが、山間部にある淡墨桜は咲き始めの時季らしい。岐阜県美濃市にある道の駅「にわか茶屋」に集合し、途中尾並坂峠を越えて、淡墨桜をめざす。往復約82kmのツーリングコースになる。

美濃市にある道の駅「にわか茶屋」、
地元でとれた新鮮野菜なども手に入る

ところが、サイクリングツアーの開催1週間前に問題発生。腰をやらかしてしまった。
そう、「ぎっくり腰」である。腰を曲げると痛みが走り、顔を洗ったりズボンや靴を履くのも、ひと苦労。腰を固定するコルセットが手放せない状態になった。爽やかな春の風が、いきなり逆風である。
1週間後には多少は回復しているだろうが、自転車で往復約82km、途中峠道を越えるのは…。まだ無理をしない方がいいかな。当初の予定では、集合場所の美濃市までクルマに自転車と妻を乗せて向かい、僕は淡墨桜を見に行き、妻は陶芸家のお友達の家へ遊びに行くことになっていた。でも今回は残念だけど、淡墨桜を見に行くのは断念。僕も妻と一緒にお友達のところへ遊びに行くことにした。もちろん自転車は持って行く。山に囲まれ、町の真ん中を長良川が流れる美濃市。長良川沿いをゆっくりと自然を感じながら自転車散歩を楽しむのも面白そうだ。


道の駅がサイクリングの拠点に

4月10日(日)は、ぽかぽか陽気で絶好のサイクリング日和となった。クルマに自転車を積み込んで、名古屋を出発。東海北陸自動車道を北上すると、約1時間少々で美濃市に到着した。
まず、道の駅「にわか茶屋」に立ち寄ると、好天に恵まれた日曜日ということもあり駐車場はクルマでいっぱいだ。すぐ横を流れる長良川沿いでは桜が満開、お花見を楽しむ人たちも多い。
道の駅の一角には、レンタサイクルの貸し出しをおこなう「サイクルステーション」があった。ここのレンタサイクルは普通自転車(300円)だけでなく、電動機付きアシスト自転車(800円)やスポーツサイクル(300円)も用意されているようだ。さらにシャワー設備(100円)もある。ペダルを回し続けていると、春でも天気の良い日にはかなり暑くなる。自転車で思う存分走った後に汗を流せるというのはサイクリストにはうれしい。

道の駅「にわか茶屋」に併設するサイクルステーション

満開の桜を眺め、道の駅で休憩しているサイクリストたちの姿もちらほら

美濃市は、観光や地域交流などに自転車の利用を促す「サイクルシティ構想」を推進しているらしい。道の駅にサイクルステーションを設けたのもその一貫なのだろう。道の駅が単なる休憩施設でなく観光の拠点として機能し、ここからサイクリングを楽しむ人やレンタサイクルを借りて周遊する人が増えれば、地域全体へ観光客がとどまり、経済的効果が広がることにもなる。サイクリング自体も人を呼ぶ観光資源になり得るわけだ。
美濃市と自転車の関係をさらに考えてみると、そういえば例年5月には全7ステージ(堺、奈良、美濃、南信州、富士山、伊豆、東京)で開催される国際自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン」美濃ステージもある。東日本大震災の影響で今年のツアー・オブ・ジャパンの開催は中止になったようだが、美濃市は自転車ロードレースの開催に積極的。来年2012年の「ぎふ清流国体」では、自転車ロードレース競技が、ここ美濃市で開催されるようだ。


淡墨桜から苗木分けした桜

お友達の陶芸工房とギャラリーは、長良川を挟み、道の駅の対岸にある。おじゃましたのはお昼過ぎ、食事の用意もされていて庭先の野外炉でバーベキューをごちそうになった。工房の目の前に長良川の清らかな水が流れ、対岸の桜を愛でながら食事を満喫するのはなんとも贅沢な時間だ。

長良川を目の前にして、バーベキューに舌つづみ

お友達の話によると、ここから長良川沿いを下流へ3〜4分ほど走ると、お寺があり、そこに根尾村の淡墨桜から苗木分けした桜があるという。他の桜より散るのが早いらしいので、花が残っているかどうかは分からないが、見る価値はあるかもしれない。目的の淡墨桜の代わりに、意外なところでその子孫に出会えそうだ。さて、美濃市の自転車散歩に出発しよう。

ぎっくり腰になってから、しばらく乗っていなかった自転車にまたがる。ハンドルを握り、前傾姿勢になっても腰の痛みはない。ペダルを軽やかに回し、長良川沿いの道を風を切ってひた走る。心地よいスピードで風景が流れていくのが気持ちいい。 しばらく走ると右手にお寺らしい建物が見えてきた。臨済山慧照院、この駐車場にある大きな桜が、淡墨桜から苗木分けされた桜。ずいぶんと大きい印象だ。日当たりのいいところにあるので、花はかなり散ってしまっている。路面は一面、白い花びら。時より春風にあおられ花びらが空(くう)を舞う。春の風が目に見える瞬間だ。

枝ぶりが立派なのも、どことなく淡墨桜を思わせる

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